大阪 京都 神戸 奈良 の 年史 記念誌 PR誌 イベント パンフレット ポスター チラシ ビデオ HP作成 のことならお任せください

広報・宣伝・営業のためのコミュニケーション&プランニング お問い合せ電話0669444016



I 30 I 29 I 28 I 27 I 26 I 25 I 24 I 23 I 22 I 21 I 20 I 19 I 18 I 17 I 16 I 15 I 14 I 13 I 12 I 11 I 10 I 9 I 8 I 7 I 6 I 5 I 4 I 

■ 29号.2012.01発行



新年号企画

2011年はすべての日本人にとって忘れてはならない年になった。
東北地方太平洋沖地震とそれにともなって発生した津波、その後の余震により引き起こされた災害、原発事故——
東日本大震災は、家族・地域の絆から民主党政府の能力、国策としての原子力施策、国土まで、日本人を覚醒させた。
さらに台風12号災害やタイでの長期洪水、きな臭いわが国の四周。
強い危機感と閉塞感を打ち砕くためにどうすべきか!テーマを絞って意見を聞いた。

明治以来の地方自治制度。国、府県、市町村の役割は?
有光弘和(元和歌山大学教授)
 市町村合併はずいぶん進んだ。今は都府県合併が必要な時だ。「市」という名称にふさわしくない“田園都市”、市内に過疎と過密を共存させている“混成都市”と、政令指定都市を「市町村」という同じ概念で考えることは不可能になってきた。一級、二級、三級市?
 緊急時には国の組織は効率的だが、平時に住民の合意を得る足腰が弱いのは沖縄問題が好例だ。

伊藤達也(NPO瀬田川リバプレ隊)
 能力があると見受けられる首長は口を揃えて、国と地方のあり方の不満をいう。使い道を限定された自由度の小さい補助金より交付金を、国と府県・府県と市町村の二重行政。やり方は乱暴に見える橋下市長の行方を非常に関心を持ってみまもる。

里深好文(立命館大学教授)
 震災時に県が機能しなかった最大の理由は財政上の限界と人材不足だったと思われる。宮城県などはその典型で「国が負担を約束してくれないと何もできない」などという知事がいては、有効な対策など打てるはずがない。未曽有の災害なのだから、「県は破産する覚悟で対策をします」と県民、国民の前で宣言し、ありとあらゆる方法で借金をしてことに当たるべきであった。阪神淡路の時の神戸市はまさにそうであったと聞く。財政再建団体に陥るリスクを抱えても、自前で積極的に対策を進めた結果、現在のような復興が実現できたのではないだろうか。
 知事や市町村長に危機管理を全面的に任せるのは無理だと思う。首長そのものが被災したり、自治体の中心部が破壊されたりすることもあるので、より大きな組織の全面的な協力が不可欠である。地方自治はいわゆる「日常」の運営に限定したものと考え、「非日常」に関しては国が責任を持つべきである。日本のように高い頻度で自然災害の脅威にさらされる国家においては、「日常」と「非日常」が共存せざるを得ないと思われ、「二重行政の無駄」もまた必要であると考えている。

高田公理(佛教大学教授)
 そもそも都道府県は必要なのか。
1980年代に、日本を東西に分け、東は「あずま国家」、西は「やまと国家」として2つの政府を樹立し、あとは「廃藩置県」の逆の「廃県置藩」を進めればどうかという提案を『朝日新聞』紙上で試みたことがある。そういう方向が検討できないか。

平峯悠(NPO地域デザイン研究会理事長)
 江戸時代初期は「中央集権体制」後期は「地方分権体制」といえる。明治維新で富国強兵施策を推進するには中央集権体制が有効で、戦後の復興をも支えてきた。
 この体制は終わったと認識する必要がある。連邦制的な統治体制が今後の方向であることは明らかで、東日本の復興も大阪・関西の再生もこの方向が正しい。大阪都構想もその第一歩とみる。

湊 勝比古(元大阪市港湾局長)
 都構想…あれだけ人気のある橋下さんであるのに、40%もの人が平松さんに投票したことを重く受け取るべきと思う。

三村 衛(京都大学准教授)
 地方分権に馴染むものと国が背負わないといけないものがおのずとある。今回の地震でも地方で頑張ってねというわけにはいかない。東南海・南海地震も広域同時多発災害になるので、同じ問題が生じる。助けは来ないと思わないといけない。その場合、被害軽微の日本海側の都道府県との事前の互助制度を考えておくなど行政境界を越えた協調や互恵関係の構築が、現行体制下では必要なのではないか。これに国の機関をどのようにリンクさせるのか、スキームを考えておかねばならない。単純に近畿地方整備局のような出先はつぶすという議論ではだめです。

某氏の裏の声
 最近の日本人は変化や改革が怖くて怖くて委縮している。根性無しばっかり。日教組による戦後教育の付けが回ってきたと反省せんか。

公共事業の削減、構造改革・財政再建は現状のままでよいか。
綾 史郎(大阪工業大学教授)
 ケインズ型の経済政策としての公共投資が景気回復に効果がなく、財政の赤字を増大したことはバブル後の経験で十分である。しかし、社会資本の整備状況(構造物の劣化等)の見地からは、これ以上の公共事業費の削減は、日本経済の将来にとってマイナスである。

有光弘和(元和歌山大学教授)
 公共事業の波及効果の低下はずいぶん前から言われてきた。経済政策として公共事業を拡大するのであれば、波及効果の高いことが実証されないといけない。とりわけ、用地買収費や補償費に巨額を要する事業は避けるべきと思う。

岡村隆正(大阪府箕面整備事務所長)
 各地方(道州政府)に任せるべき。本当のデフレではないのかもしれない。今まで生産性、流通など悪く、高コストだったのが、適正価格になっただけかもしれない!なら、何をすべきか?年収600万円以下(外国では低所得者ではない)の8割の国民が、その年収で豊かに暮らせるようにすべき。例えば、食費、教育費が高すぎるのを是正も。

黒山泰弘(元大阪市建設局担当部長)
 社会資本・公共施設の保全・更新は先送りせず予算を拡大しなければいけないと思う。ただ、既存の社会資本・公共施設のすべてが社会にとって必要不可欠ではないので、「捨てる」「コンパクト化」という発想も大事。また、新規の施設建設は経済原理のみに基づいて事業計画するのではなく、税等を使って公が整備する必要性が真にあるのか、維持・更新を含めたトータルコスト等を充分精査して事業計画を立案する必要があると思う。

谷本光司(水資源機構副理事長)
 日本はいま貧乏で病弱。ここで節約ダイエットをしていては、病気の悪化のデフレスパイラルに落ちる。借金してでも基礎体力をつけて、元気になってから、しっかり借金返済すべき。

馬場俊介(岡山大学教授)
 ケインズ経済学は過去の遺物。財政出動が有効とは思わない。しかし、増税は景気の回復を確実に遅くするし、消費税を避けていると累積債務は増えるばかり。景気が回復するまでは、(1)高所得者の所得税率を今より相当高くし、(2)今回見送ったタバコ税を上げ、(3)都市部の開業医師の保険点数をかなり下げ、(4)弁護士・税理士などの特殊個人業主の税率を上げ、(5)上級の国家公務員(本省課長級以上)の給与体系見直しなどの小手先で数年我慢した後に、消費税率を7〜8%に上げること。インドなど知的財産権が守られる国との交易を増やすことで、製造業の活性化を図ること。一時半数以下に落ち込んだ「外国人観光」を少なくとも震災前の水準に戻すこと。
などの施策を複合的にとること。

平峯悠(NPO地域デザイン研究会理事長)
 手垢にまみれた公共事業という名称には違和感を覚えている国民は多い。経済論からも公共投資が国を支え、雇用を生み出し、地域の活性化と沈滞ムードの払拭に貢献するのは明らか。従って公共事業の意味を国民に啓蒙し、オピニオンリーダーに対し本気で理解してもらう努力が必要。そのうえで財政出動として公共投資を拡大すべきであると考える。

松島 清(住友信託銀行)
 コンクリートや鉄骨を使う点は同じであることが多いと思うが、真に国土の均衡なる発展や住民の安全・安心・利便につながる公共事業を優先的に行うべきと考える。EX:防災…真に必要な堤防、ダム。大阪で言えば、リニア新幹線を一気に大阪まで開通させるインフラ投資とかに投じるべきと考える。

三村 衛(京都大学准教授)
 メンテナンスや修復に関する意識の低さ(予算のつきにくさにも通じる)が問題。創ったものは古くなるという原則に沿って計画的に予算措置をしておくべき。現在は壊れれば(事故を含め)予算をつけるというやり方なので、この点は改善すべき。

某氏の裏の声
 能力がなく腕力が強い人間が出来ることは道路工事などしかない。星一徹のまんがや万博の道路工事でどれほどみんなが潤って生き生きしていたか。生活保護を出すなら穴でも掘って金稼げ。

「旧来型公共事業」でよいか。「新しい公共事業」とは?
瓦井秀和(城西国際大学大学院教授)
 行政は大きな枠組のグランドデザインを示すだけで、民間の知恵で実践の部分を構築する知恵の競争を導入すべきだと考える。金額的入札だけで物事を決めるのではなく、あらゆる情報を公開して民間のノウハウ・活力を導入したものに改革していく必要があるのではないだろうか。

木本凱夫(元三重大学助教授)
 個人の興味としては河川の再生、不要となったダム撤去。減反農地を河川堤防の周りに集める。次に引き堤をして農地を河川内に取り込む。蛇が卵を飲み込んだような、いびつな河川形状になるだろうが、50年ぐらいかけて河川幅を拡大したいものだ。

久保田晃司(阪神電気鉄道)
 経済成長のため、道路のような長い目で見た国土開発だけではなく、農業や製造業といった国内産業の再編、振興に直接つながる施設整備に力を入れる必要がある。

高田公理(佛教大学教授)
 国土保全のためには、若者たちを対象に、非軍事的な「国土保全隊」を組織して、森林保全などの業務に当たらせるなどというのはどうか。教育に関しては、紙と鉛筆を使った机上の知識提供型のものとは異なる、ものづくりを中心とする多様な実務教育を拡充する必要があり、そのための投資は当然一種の公共事業であろう。さらに、国家的な目標「観光立国」を可能にする文化施設とその運営に適切な投資を行なうことが必要なのではないか。

竹林征三(富士常葉大学名誉教授)
 日本国の国土の安全度向上に努めるべきである。災害の宿命に対して、災害に備える公共事業が本筋である。備えあれば憂い少なしである。今回の災害でも、備えた量により被害額は歴然と違う(マスコミは反対の報道をしているが)。また、太陽光発電、風力発電は日本には不適で、環境破壊である。再生エネルギー法案は日本文明滅亡への法案である。
●『環境防災学 災害大国日本を考える文理シナジーの実学』著者紹介価格2,800円(税・送料込)[定 価3,150円] 2011年8月技報堂出版
●『ダムと堤防 治水・現場からの検証』2011年9月鹿島出版会 著者紹介価格3,000円(税・送料込)[定 価3,465円]

松木武彦(岡山大学教授)
 旧来型(コンクリート)の公共事業も、人命や財産を守るために最低限は必要であるが、旧来の既得権や利権構造を守るための事業なら是正しなければならない。そうなると、旧来型のものは縮小の方向をたどらざるを得ないかもしれない。新たな公共事業は、考古学研究者としては、歴史の遺産や文化財の活用に、他国の新しい優れた手本を参考にしながらコストをかけていただければと思う。

松村暢彦(大阪大学教授)
 コンクリートが悪いわけではない。公共事業の進め方が信頼を得ることができなかっただけ。質の悪い、必要性を十分言葉で説明できない公共事業も十把一絡げで守ろうとしたため、費用便益分析という誰でも分かる指標を導入せざるをえなかった。本来実施すべきと計画者が考える事業について、数字に頼るだけではなく、言葉で説明するスキルと情熱を持つべきではないか。

その他の意見
岩井珠恵(景観デザイナー)
 海岸崖を背に小さな入り江の一番低いところに海面があり、海面から7メートルほどの高さに家々の甍が連なり、崖を10メートルほど上ると社寺がある。社寺からは集落はもとより、海が広く見渡せる。そうした景観構成が日本の漁村の美しさを形づくっていた。オールコックやイザベラ・バード、小泉八雲が書き記した幕末頃の美しい日本が、農山漁村はもとより多くの地での景観づくりの大きなフレームだった。
 3.11後、日本の漁の町の伝統的景観が大きく変わってしまうことが、とても気にかかっている。

里深好文(立命館大学教授)
 個人の権利を見直す必要がある。街の再生は社会の一部分としての個人であるとの意識なくして実現不可能である。たとえば治水対策を考えるとき、堤防のどこから越水するかわからない状況が一番リスクが高いので、越流ポイントを特定し、堤防高さをその箇所だけ低めにすれば、少なくとも洪水の発生個所は特定できるため集中的な対策を打つことが可能になる。堤防延長すべてを強化するのは、資金的に見ても不可能であり、環境への負荷も大きいので、越流部分に限り、決壊しない構造に堤防を作りかえることもできる。危ない場所はどうしても危ないのであって、「皆さん同じように安全に暮らせますよ」などというまやかしを信じるほど国民も愚かではないだろう。
 すべての国民に同じようにベネフィットを与えることは実際不可能であることを明確にして、最大多数の最大幸福を改めて目指していく時ではないだろうか。ちなみに「最小不幸」社会などというつまらないものを目指すと、あっという間に国は滅ぶだろう。

清水良郎(名古屋大学教授)
 今の日本の根本的な問題は(1)努力が報われない、(2)正直者がバカをみる、という考え方が国民の心に染み渡ってしまったこと。「がんばっても結果は同じ」「要領のいいヤツだけがトクをしている」と考える大人が子どもの心もスポイルしてしまった。これをたとえ時間がかかってもくつがえしていかないとこの国の将来はない。

建山和由(立命館大学教授)
 日本のインフラ整備は作る時代からうまく使う時代に移っている。業界も発注者も対応が遅れているように感じる。維持管理の仕事は作る以上に高度な仕事で、技術開発という意味では土木を活性化するポテンシャルを有しているといえる。しかし、今の発注制度では対処療法的な仕事が多いため、発注される仕事の規模が小さく、力のある建設会社が入りにくい構造だ。このままでは技術開発の流れが励起されず、民間の技術力も活かされていない。この状況はもったいないの極み。また、日本の経験と技術を海外で活かす方法論を追求する流れがもう少し欲しいところ。

西村総一郎(城崎温泉・西村屋社長)
 人口減少時代を迎え、地方ではマーケット縮小とともに労働力の確保が問題になる。短期的に解決する特効薬は移民受け入れかもしれないが、この国にはなじまない。縮小均衡をはかりながらも人口増に向かう政策が必要である。公部分のリストラは重要で前向きな施策への予算配分が望まれる。

馬場俊介(岡山大学教授)
 全国調査をしていると、明らかに無駄な道路と「必要なのになぜ整備しないのか」と疑問に思う道路とがある。公共事業の対象は道路だけではないが、道路1つをとりあげてもこうした矛盾があるということは、他分野でも同様のことは起きているはず。特に、農水省の圃場整備事業や漁村整備事業で貴重な土木遺産がどんどん失われてしまう点には、常に憤りを感じているので、削減する余地はある。「地元の要望」という言葉をよく耳にするが、実態は一部の有力者の意見が一方的に伝わっているだけのことが多い。これでは、「政治家の利権誘導」民間版に他ならない。

グラフ

ページの先頭へ

東日本大震災 土木の戦士たち

未曾有の災害・東日本大震災。自分にできることはないか…すべての日本人は思った。私も「避難所だより」づくりや指導なら手伝えると、被災三県の災害ボランティアセンターに問い合わせたが、ニーズはなかった。
震災対応で土木はがんばった。しかし、あまり知られていないし、生の声を少しでも残すことが自分のできることだと思い至り、ぼちぼち取材した。近畿から現地に応援に行った人、東北地方整備局、被災首長らから話を聞いた。 遅ればせながら震災一年を目処に一冊にまとめることにした。本欄ではさわりを紹介します。(道下弘子)

■3月11日深夜
 すべての自治体へリエゾン派遣

「おい、いける市町村ぜんぶおくぞ。」
 国土交通省東北地方整備局。川嶋直樹企画部長が池口正晃企画調整官に言ったのは、道路がつながっている被災市町村に自治体リエゾン(災害対策現地情報連絡員)※1を送り込もうということだった。
 11日に発生した東日本大震災で沿岸地域は壊滅、そこに至る道路も寸断されたが、東北自動車道路から三陸沿岸へのびる道路をまず救援部隊が通れるようにと、東北地整局が「くしの歯作戦」を展開した。翌12日には16ルートのうち11ルートはなんとかつながり、ようやく被災市町村にリエゾンを派遣できるようになった。
 通常なら市町村の被災情報は県が要となり把握するが、東日本大震災では沿岸市町村の情報がどこからもほとんど入ってこなかった。通信手段が途絶していたからだ。
 3月11日の深夜(12日未明)、池口は地図を広げ、被災していない日本海側や内陸の出先事務所と三陸沿岸の市町村を線で結んだ。2時間ほどでできあがると、片っ端から事務所長に電話をかけた。
 「○○町に行ってください。リエゾンは○人派遣してください。派遣期間はいつまでかわかりませんが、ローテーションもそちらにお任せします。通信機器は持って行ってください。物資も燃料も自前で調達してください。今日にでも行ってほしい。」
 池口は無茶苦茶なオーダーだと自覚しながら8つの事務所に指示した。
 その後、派遣の規模を拡大させ、原発の警戒区域以外の被災自治体31市町村に自治体リエゾンが入った。

■陸前高田市3月13日
 TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)※2の青い制服を着た鈴木恵吉と清水川斉は、湯沢河川国道事務所を13日9時30分に出発、道路はスムーズに走ることができ、昼過ぎに陸前高田市の災対本部が置かれている給食センターに到着した。給食センターの一室に仮設された災対本部は10畳ほどと狭く、8〜9人の市職員がいた。すでに岩手県から衛星電話4回線が設置されていたが、リエゾン派遣の連絡は彼らに届いてなかったようで、リエゾンとはなんぞやから説明しなければならなかった。真っ先に出たリクエストは照明車。これがあれば真っ暗な夜間も作業できる。また、執務スペースが狭いうえ機能が不十分であることを見取った鈴木が災害対策本部機能を持つ車を勧めると、「それもお願いします」。
 さらに、対流式ストーブと灯油、発動発電機及び燃料、毛布10,000枚、仮設トイレ、バキュームカーを県に要請しているがまだ届かないので、国交省でなんとかならないか…。発災から50時間以上経っていたが、支援物資はほとんど届いていなかった。
 清水川は繋がりにくい移動通信システムK-COSMOSを何度も何度もかけて東北地整局リエゾン班に伝えた。
 翌朝、鈴木と清水川ははじめて戸羽太市長に会った。市長は当初戸惑っていたが、説明を終えると「ガソリンとトイレをお願いできますか?」。
 照明車はその日の昼にやって来た。東北の能代と湯沢から一台ずつだった。災対本部車は1日遅れて15日に来た。近畿から12日に大挙してやって来たうちの一台だった。
 災対本部車は、いつでもどこでも災対本部会議ができる機能を積んだ大型車両で、拡張式なら約6畳の広さ。衛星通信車とセットで使う。会議スペースやトイレの他、数回線の電話、ファクスが使え、設定によっては画像も送受信できる。災対本部車を知らなかった戸羽市長は「内部はウルトラ警備隊みたいと思った(笑)」。
 さっそくこの災対本部車を使って東北地整局長徳山日出夫とのホットライン通話を行うことになった。清水川が戸羽市長を災対本部車に招き入れ、10時20分、局長と市長が発災後はじめて話した。
 戸羽市長はこのように述懐している。
 「車に乗せられて、電話を渡されて、局長と話してくださいって。助けに来てくれたことはわかりますし、国交省の方だというのは制服も着ていらっしゃるからわかりますが、その方々とは面識ないし、わけわかんないんですよ、実際。
 局長と話すと、国交省と思わなくていいですよと言われましたが、国とのつきあいは縦割りでやってきたもんだから、ぴんと来ないですよ。
 どんなことでも頼んでいいんですかと聞くと、“国土交通大臣から言われています。国交省の役人としてではなく、国としての窓口になれと言われてますから”ということだったので、思い切って何でも言ってみようと思いました。」
 戸羽市長は続ける。
 「当時は燃料が確保できたら順番に火葬していましたが、板の上にご遺体をのせて周りを段ボールで囲むんです。ただ、どんどんどんどんご遺体が出てきて、あまりいい状態でないものもあるし、服を着ていないものもあるので、ご遺族の方にしても他人にご遺体を見られるのはつらい。で、お棺をお願いしました。国土交通省の方に言っていいかわかんなかったんですけど、なんでも言ってくれ、“闇屋のオヤジ”だと思ってくれと言われてたので。
 どうしてそういうことになったのか経緯はわかりませんけど、非常にありがたかったです。
 われわれは頼るところがないんですよね。被災地は陸前高田市だけじゃない。他所も困っているから隣近所に声をかけることも出来ない。それに電話もつながらないときにつなげていただいて、ありがたかった。」
 被災市町村御用達の“闇屋のオヤジ”軍団となった東北地整局。軍団の総合窓口を担ったのが池口だ。自治体リエゾンからのニーズ情報はTEC-FORCE統合指令本部が受け、池口のもとにいったん集約される。そこから道路、河川、機械、資機材の各班に振り分け、振り分けきれないコト・モノは池口が処理する。ルールはただ一つ、「ダメ」と答えない、できるところまでやって出来ないときだけ「出来ない」と言え。
 資機材の調達担当は東北地整局企画部環境調整官の原田吉信。約30年の役所勤めで災害対応はそれなりに経験してきたが、もちろんこんなことは初めてだった。とにかく、困っているところに手を差し伸べたいし、リエゾンが受けた注文に早く返事をしたい。市町村では夜の災対本部会議のあと担当者がぼそっと「こんなものがほしいです」というところもあるから、当然24時間対応だ。
 それにしても、物資不足のなか本当に何でも揃えられるのか——。原田に不安はあったが、無理をお願いする先はゼネコンや商社などたくさんあったから、結果的には3月13日から31日まで218のオーダーに対して平均3日で約9割調達した。いつのまにか「生理用品から棺桶まで」というキャッチフレーズがついていた。
 市町村にとって、支援物資を調達すべき県庁にはなかなか連絡がとれない。依頼しても時間がかかったし、取りに来いと言われることもあった。一方、闇屋軍団はいつもそばに御用聞きがいてくれて、仕事も早い。となれば注文したくなるのは当然だ。次第に闇屋軍団への注文が増えていった。

※1 自治体リエゾン:フランス語で「つなぐ」、「連絡将校」の意味で、被災した自治体からの情報を待つのではなく、現地ですばやく情報を獲得するために、必要な期間だけ自治体に常駐する。
※2 TEC-FORCE:自治体等が行う被災状況の迅速な把握、被害の発生及び拡大の防止、被災地の早期復旧その他災害応急対策に対する技術的な支援を行なう。

ページの先頭へ


停滞の長寿国
 強気経済論のエコノミストとして著名な金森久雄氏が、ある弱気論者を評して「あの人も体調が優れないようだ」と言ったことがある。問い直すと、もともと強気の人でも体調不良だと弱気論に傾く傾向があるということだった。人間は体調次第で考えも態度も変わる。体調不良の年寄は弱気で愚痴っぽくなる。
 党内融和路線で動き出した野田内閣は、国際路線もTPP(環太平洋経済連携)と「アセアン・プラス3」の両面作戦を取ろうとしているかにみえる。どちらを向いても協定作りの中心には、「自国の正義は世界の正義」と思っている大国、アメリカと中国がいる。内外とも融和の手がかりは見つけにくい。しかも、経済停滞の長寿国では、弱気の反対論がどこからともなく湧き出す。農業、医療、公共事業、金融、中小企業……。年をとると、体調不良もあちこち、まちまちで多彩になる。
 過去を懐かしむのも年寄りの性で、同じ54歳で首相になった田中角栄氏だったらどう舵をとるだろうかと空想してみる。汗かきで手放せない白扇を軍配のように持って、「進め」と叱咤している。遮二無二進むのは若さの“特権”だ。傍らの池には氏の愛でる立派な緋鯉が泳ぐ。そして、池の底には「金魚の真似も出来ない」と言う泥鰌が身を潜めて動かない。悪い初夢を見てしまった。

(有光弘和)

ページの先頭へ
Copyright(C), 2000 Animateur.,co ltd All rights reserved
株式会社アニマトゥール弘報企画
〒541-0046 大阪市中央区平野町2-2-8 イシモトビル2階
TEL 06-6944-4016 FAX 06-6944-4026
E-mail : boss@animateur.co.jp